※このページでは、滝沢村当時の取り組みについて記述していますので、「村」表記となっております。
行政経営品質とは
21世紀は「分権の時代」といわれ、これまでの「中央集権の時代」とは異なるフレームで行政活動が行われます。
21世紀の行政には、これまでの中央が決めた一定の手順に従って行政を進めるといった20世紀型の画一的な行政運営から、それぞれの地域の環境の変化に対して、各自治体が独自に内部を変革して対応していくといった動的な行政経営ができる仕組みが求められます。
いま行政は、「住民から離れた硬直したシステム」から「住民主導の個性的で総合的な行政システム」へと質的転換を図らなければなりません。住民が価値があると思い、役立つと評価し、満足できる行政の仕組みを構築しなければ、行政の存在価値はなくなります。
「行政経営品質」とは、住民が評価する行政経営の仕組みのことであり、「行政経営品質向上活動」とは、住民が評価する行政のあり方といった観点から行政システム全体を抜本的に見直し、継続的な改善活動を通じて行政経営全体の品質を高めることによって、住民本位の行政への質的転換を実現することです。
「行政経営品質向上活動プログラム」は、世界的な経営革新のデファクト・スタンダ-トと言われる米国「マルコム・ボルドリッジ国家品質賞」によるセルフアセスメント(自己評価)の考え方を範として、アジアや欧米をはじめ50ヵ国以上で実施されているグローバルな経営革新プログラムと同様のものです。
行政経営品質の考え方を活用して、環境や社会の変化に即応しながら行政経営改革を実現する体質を作り上げるための一連のツールや施策を体系化したものです。滝沢村では、このプログラムを活用して住民本位の行政経営の実現をめざしています。
行政経営品質向上活動の必要性
地方分権の推進を実践し、厳しい財政状況を乗り切るために、地方自治体は行政システム全体を抜本的に見直し、住民志向の経営体制を確立する必要があります。
「行政経営品質向上活動」は、優れた民間企業を表彰する仕組みである「日本経営品質賞」の考え方と審査基準を基本に、行政経営の品質を評価していく活動です。組織の目的は異なっても、一定の目的を達成するために組織をマネジメントする点においては共通項が多く、「日本経営品質賞」は自治体経営にとっても有効なツールとなることから、この活動を通して、住民が求める価値を創出し、効率性、透明性を継続的に維持、強化するための経営の実現が可能になります。
行政経営品質で最も重視しているもの
施設・サービスのクオリティに限らず、行政のイメージや過去の経験から受けた影響さらには住民が他団体と比較して評価した行政活動全体を「クオリティ」としてとらえ、このクオリティの程度は、住民が判断するものです。
住民が評価するクオリティとは、自らの存在価値をどう規定し、その中で独自性や優位性をいかに獲得するかという戦略概念です。これを明確にしその維持や強化を図るためにはまず既存の住民の要求・期待に対して謙虚にかつ鋭敏でなければなりません。そして住民満足に影響を与える要素を明らかにし、すばやく柔軟性のある対応が求められます。一方、住民不満への対応も重要で、欠陥や誤りをいち早く除去し住民の信頼を回復することも非常に大切なことです。
この行政経営品質で最も重視しているものは「住民の視点に立った経営を実現できるか」ということであり、これを実現するには「住民ニーズへの対応」と「競争力強化(独自性)」が不可欠です。
住民が評価するもの、他団体との違いを示すものすべてを含むクオリティへの評価が、行政の存続に大きな影響を与えることになり、クオリティへの取組が行政組織の盛衰を決める戦略の重要要素となるものです。
この活動に取り組むことのメリット
- 住民本位の行政が推進できます。
- 「本当に住民の視点で行っているか」「住民の要望・期待をすばやく取り込んでいるか」「他団体と比較して常に最善か」などの視点で見直すことで、組織を住民本位の優れた体質にするきっかけとなります。
- 全庁レベルの改善領域が明確になります。
- 幹部の思いがどれだけ伝わっているかを検証できます。
- 幹部が意図していることが、戦略の策定、施策の企画・実施、人材育成、住民との直接的なサービス提供などのすべての場所において浸透されているか、検証することができます。
- 継続的な改善の仕組みができます。
- 自己評価を行うことにより、どこを改善することが適切かを発見することができます。改善の成果は、全庁への取組の機運を高め、さらに充実した改善に結びつけることができます。
- 現在の改善活動を包括して推進、評価することができます。
行政経営品質行動活動導入の背景
国内的背景
平成12年4月1日から地方分権推進法が施行され、自治体運営は経営そのものとなりましたが、予算、決算、事務事業、組織、機構、定数配分等従来の手法では対応できなくなっています。
従来の行政システムを抜本的に改め、生産性と効率を重視したマネジメントにシフトし、自治体ランキング時代に備える必要があります。
必要性
住民は、人生を送るに欠かすことができない生活環境について、この街に住んでよかったと自分の判断に確信を持ちたいと思っています。行政はこのニーズに応える義務があり、住民満足を向上させる使命があります。
これからの自治体は、納税者の負担する税金と享受するサービスのバランスの中で、資源(人、物、金、情報等)を効率的かつ効果的に配分して経営をしていかなければなりません。
この取組は、住民が評価する行政のあり方という視点から職員個々の資質の向上とパラダイムシフト(考え方の枠組みの変換)、住民本位の行政組織の構築、役場内部の組織文化の変革等行政経営の仕組みを住民の側に立った「ものさし」で継続的に改善させることによってより住民のニーズに即した政策の開発や住民サービスの効率化を図り、住民満足度の向上を図ろうというものです。
これまでの活動の概要
このような時代の流れを受け止め、着実なシステム転換を果たしていくため、定期的に行政経営品質全体を客観的に診断し、これに基づいた経営方針の確立、修正等を推進していく必要があります。
このため、「日本経営品質賞」のフレームワークに基づき、「行政を構成するすべての仕事の品質」すなわち行政経営品質の向上活動を展開するものです。
取り組みを開始した平成12年度は、本村の行政経営の品質について「全庁」、「企画課」、「生活環境課」及び「福祉課・基幹型介護支援センター」の4つをアセスメント対象として外部機関にアセスメント(評価)してもらったほか、庁内に10名からなるワーキンググループを設置して全庁についてのセルフアセスメント(自己評価)を実施しました。
その後、継続的な取組と外部アセスメントを経て、平成16年度に岩手県経営品質賞最優秀賞、平成18年度に日本経営品質賞(地方自治体部門)を受賞しました。
滝沢村としての認識
「地方分権時代」とは
- 明治時代以来続いてきた東京を中心に作られていた様々な仕組みが、市町村をはじめとする地方を中心にした仕組みに変わります。
- 「東京」で全てのものごとを決めるのではなく、市町村が一人ひとりの住民の立場に立って、何をなすべきかを判断し、ものごとを決めていくことができるようになります。
- 住民の一人一人にとって、それぞれの満足度を充足した質の高い行政サービスを提供することのできる市町村と、それができない市町村との格差がはっきりしてきます。
これが市町村選別の時代の到来です。(住民が自分の住むところを選ぶ時代の到来)
「地方分権」その背景は
これまでの行政運営
行政本位
社会・経済情勢の変化
「右肩上がり」の成長神話の終焉
問題への対応
「ゆとりと豊かさを実感できる社会」の実現
「行政本位」のシステムから「住民本位」のシステムへ
「住民が主役」といわれてきたが、それを実現するシステムが存在していませんでした。
「住民本位」のシステムとは
- 法令主義から住民第一主義へ
- 手続き・プロセス志向から成果優先主義へ
- 上意下達から現場主義(現場による即断即決)へ
- 請求されてからの情報公開から請求以前の積極公開(対話)へ
従来の行政改革は、「自前の処方箋」による「業務の改善」でした。しかし、単なる意識改革運動や業務の改善では抜本的な改革は不可能です。
「システム転換」とは
- 「住民のニーズ」に立脚して、「民間の経営手法」を活用しながら、「仕事の・仕組みや進め方(仕事のやり方)」を変えることです。
- 「システム転換」とは、組織の体質を変えることであり、それは組織風土や組織文化を形づくる職員個々の「遺伝子レベル」の転換です。
- 「行政本位」(役所の論理)から「住民本位」への転換は、あらゆる場面で仕事の仕組みや進め方を変えていくことです。