春子谷地は、岩手山登山口の柳沢から姥屋敷方面へ約3km行ったあたりにあり、岩手山南東の鞍掛山山麓に開けた湿原で、標高450m前後であり鞍掛山(897m)からの伏流水(ふくりゅうすい)の湧水によって成りたっています。この湿原は有史以前に奥羽山脈の山麓地帯の広い範囲にあったと思われる湿原を代表するものの一つであるといわれています。現在この周辺には人工草地や畑が作られているにもかかわらず、湿原にはほとんど人の手が加えられることがなく、自然状態が良く保存されています。

(写真)ミズバショウと岩手山

湿原に生えているもののうちで分布の上から珍しいものは、シロミノハリイ、シラカワスゲ、ホソコウガイゼキショウ、イトナルコスゲ、ホロムイクグ、ホソバノシバナなどであり、特にシロミノハリイは日本における分布の南限となっています。この他に主な植物をあげるとシャジクモの一種、ミズゴケ、ヒメミクリ、ヘラオモダカ、ヨシ、ヌマガヤ、ヤチスゲ、サギスゲ、ワタスゲ、ミズバショウ、キンコウカ、コバイケイソウ、ノハナショウブ、エゾハンノキ、ヒツジグサ、モウセンゴケ、ウメバチソウ、ナガボノシロワレモコウ、ハイイヌツゲ、ミヤマウメモドキ、イソノキ、ミズオトギリ、レンゲツツジ、クサレダマ、サクラソウ、エゾオヤマリンドウ、ミツガシワ、ムラサキミミカキグサ、サワギキョウ、マアザミ、ミズギクなどがあります。

季節によって、春にはエゾハンノキやミズバショウ、サクラソウが咲き、夏にはノハナショウブやヒツジグサ、モウセンゴケが咲き、サギスゲやワタスゲの白い綿毛が風にそよぎます。そして秋にはウメバチソウやサワギキョウ、エゾリンドウが見られます。

このように、この湿原には珍しい植物が生えているばかりでな く、永い間に亙り、自然がうけつがれて来たものであり、この残された大切な自然を長い目で見守ってゆかなければならないのではないでしょうか。

画像提供

岩手県立博物館専門学芸調査員 鈴木まほろ 様

所在地

滝沢市岩手山268番地6

所有者

滝沢市

指定年月日

昭和44年4月26日

注意

春子谷地湿原植物群落の立ち入りは、文化財保護の目的から禁止されています。

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